二十代の頃は髪の量が多くて困るほどだった私が前髪の薄さを気にし始めたのは三十代半ばに差し掛かった頃で最初は季節の変わり目の抜け毛だろうと軽く考えていましたが鏡を見るたびにおでこが透けて見える面積が増えている事実に気づき愕然としました。毎朝のセットが決まらないことへのイライラはもちろん風が吹く日や湿度の高い雨の日は外出することさえ憂鬱になり無意識のうちに手で前髪を抑える癖がついてしまったほど精神的に追い詰められていました。そんな私が現状を打破するために最初に取り組んだのは徹底的な頭皮ケアの見直しでありそれまでは洗浄力の強い市販のシャンプーを使ってゴシゴシと洗っていましたが頭皮への負担を最小限に抑えるためにアミノ酸系の優しいシャンプーに変え予洗いを三分以上行って汚れを浮かせてから泡で包み込むように洗うスタイルへと変更しました。またお風呂上がりには必ず育毛エッセンスを塗布し頭皮が柔らかくなるまで入念にマッサージを行うことを日課にしましたが最初は効果が目に見えず挫けそうになることもありましたが継続は力なりと信じて半年間一日も欠かさずに続けました。食事面でも髪の主成分であるタンパク質を意識的に摂取するために毎朝納豆と卵を食べるようにし外食時もパスタやパンだけの単品メニューは避けて定食を選ぶなど栄養バランスを整えることに注力しました。さらに生活習慣の中で大きく変えたのは睡眠に対する意識であり以前は深夜までスマホを見て夜更かしをしていましたが髪の成長ホルモンが分泌されるゴールデンタイムを意識して日付が変わる前にはベッドに入り質の高い睡眠を確保するように心がけました。こうした地道な努力を続けて一年が経つ頃ふと鏡を見ると以前のようなペタンとした寂しい前髪ではなく根元からふんわりと立ち上がる元気な髪が戻ってきていることに気づき美容院でも「髪質が変わりましたね」と褒められるまでになりました。薄い前髪を克服する過程で学んだのは魔法のような即効薬はなく日々の小さな積み重ねこそが最大の特効薬であるという事実であり自分の体を大切に扱うことが結果として美しさにつながるという自信を取り戻すことができたのが何よりの収穫でした。