男性ホルモンを減らすという行為が体の中で実際に何を引き起こしているのかを理解するには人体の精巧な内分泌系の仕組みを知る必要があります。私たちの体には恒常性ホメオスタシスという機能が備わっておりホルモンバランスも脳の視床下部下垂体精巣または卵巣という軸によって厳密に制御されています。視床下部が血中のホルモン濃度を感知し足りなければ分泌指令を出し多すぎれば抑制指令を出すというネガティブフィードバック機構が働いています。男性ホルモンであるテストステロンは主に精巣のライディッヒ細胞でコレステロールを原料として合成されます。外部から薬物や食事療法によってこのバランスに介入しようとすると体はこのフィードバック機構を通じて反応します。例えば抗アンドロゲン薬を使用してテストステロンの作用をブロックしたりDHTへの変換を阻害したりすると脳はホルモンが足りないと判断し一時的に分泌指令を強めることがあります。しかし薬の効果が勝れば最終的にはホルモンの作用は抑制されます。また大豆イソフラボンのような植物性エストロゲンを摂取すると体はエストロゲンが充足していると錯覚し相対的にアンドロゲンの作用が弱められるような反応を示します。ここで重要なのはホルモンは単独で働いているのではなく相互に影響し合っているということです。男性ホルモンを急激に減らすと拮抗関係にある女性ホルモンの作用が強く現れたりホルモン全体のバランスが崩れて自律神経失調症のような症状が出たりすることがあります。これは内分泌系という精密機械の歯車を無理やり止めるようなものだからです。さらにテストステロンは筋肉骨格造血機能脂質代謝糖代謝認知機能など全身のあらゆる生理機能に関与しています。これを人為的に抑制することはこれらの機能低下を招くリスクと背中合わせであることを科学は教えてくれます。したがって医学的な治療においてはホルモン値を定期的に血液検査でモニタリングしながら副作用が出ないギリギリのラインを見極めて投与量を調整します。民間療法や自己流の対策であってもその背後には複雑な生化学反応が起きていることを忘れてはいけません。科学的な視点を持つことは都市伝説的な情報に惑わされず効果とリスクを客観的に評価し自分の体を守りながら目的を達成するための羅針盤となるのです。