私たちの髪の毛が、日々の食事から作られていることをご存知でしょうか。中でも、健やかで力強い髪を育む上で、ミネラルの一種である「亜鉛」が極めて重要な役割を果たしていることは、近年広く知られるようになってきました。では、なぜ亜鉛はそれほどまでに髪にとって大切なのでしょうか。その理由は、大きく三つの働きに集約されます。第一に、亜鉛は髪の主成分である「ケラチン」というタンパク質の合成に不可欠な存在であることです。私たちが食事から摂取したタンパク質は、一度アミノ酸に分解され、体内で再びケラチンとして再合成されることで髪の毛になります。亜鉛は、この再合成の過程で働く酵素を活性化させる「補酵素」としての役割を担っています。つまり、いくらタンパク質をたくさん摂っても、司令塔である亜鉛が不足していては、髪の材料をうまく組み立てることができないのです。第二に、亜鉛は細胞分裂を正常に促進する働きがあります。髪の毛は、毛根の奥にある毛母細胞が、活発に細胞分裂を繰り返すことによって成長します。亜鉛は、この毛母細胞の分裂をサポートし、新しい髪が次々と生み出されるのを助けています。亜鉛が不足すると、この細胞分裂が滞り、髪の成長が遅れたり、細く弱い髪しか生えてこなくなったりする原因となります。そして第三に、ヘアサイクル(毛周期)を正常に保つ役割です。亜鉛は、抜け毛の原因となる酵素の一種「5αリダクターゼ」の働きを抑制する作用があるとも言われています。これにより、髪が太く長く成長する「成長期」を維持し、抜け毛の期間である「休止期」への移行を遅らせる助けとなります。このように、亜鉛は髪が作られ、育ち、そして抜け落ちるまでの全てのプロセスに深く関与しているのです。髪のハリやコシがなくなったり、抜け毛が増えたりした時、それは体からの亜鉛不足のサインなのかもしれません。
亜鉛が髪の健康に欠かせない理由