薄毛治療のウソ・ホント

三十代に突入した頃から、私の悩みは常に髪の毛にあった。朝、枕についた抜け毛の数に一喜一憂し、シャワー後の排水溝を見るたびに心が沈む。以前はもっとハリがあったはずの髪は、いつしか細く弱々しくなり、全体のボリュームも心なしか減ってしまった。ワックスでセットしても、夕方にはぺたんこになってしまう。そんな自分に自信が持てず、人の視線が気になって仕方なかった。食生活も偏っていた自覚はあった。仕事が忙しいのを言い訳に、ランチはコンビニのパスタ、夜は外食かスーパーの惣菜で済ませることがほとんど。そんな生活が、髪に良いわけがない。インターネットで「抜け毛 原因」と検索するうちに、何度も目にしたのが「亜鉛不足」という言葉だった。髪の主成分であるケラチンの合成に不可欠な栄養素。まさに、今の自分に足りていないものかもしれない。そう直感した私は、半信半疑ながら、ドラッグストアで亜鉛のサプリメントを購入した。飲み始めて一週間、二週間。もちろん、劇的な変化はない。相変わらず髪は抜けるし、鏡の中の自分も変わらない。「やっぱり、サプリなんて気休めか」。そう諦めかけたこともあった。でも、ここでやめたら何も変わらないと思い直し、とにかく三ヶ月は続けてみようと決めた。変化に気づいたのは、二ヶ月目が過ぎた頃だっただろうか。ふと髪を触った時、指先に感じる感触が以前と違うことに気づいた。一本一本が、ほんの少しだけしっかりしてきたような気がするのだ。そして三ヶ月後、明らかにシャワー後の抜け毛が減っていることを実感した。枕につく髪の毛も、以前の半分以下になっていた。髪にコシが戻ってきたおかげで、スタイリングも決まりやすくなった。亜鉛サプリが全てを解決してくれたわけではないだろう。サプリをきっかけに、食事で牡蠣やレバーを意識して食べるようにもなったし、睡眠時間にも気を使うようになった。でも、あの時、一歩を踏み出して亜鉛サプリを試したことが、私の生活と意識を変える大きなきっかけになったのは間違いない。今では、鏡を見るのも怖くない。亜鉛サプリは、私の髪だけでなく、心にもハリとコシを与えてくれたのだ。